「いま、ここ」のおいしさを探して −vol.1 菊酒−
「いつでも」「どこでも」欲しいものが手に入る時代。
とても便利だけれど、かえって日々は単調になってしまいがち。
でもそんな毎日にアクセントを加えるヒントも、意外と「いま、ここ」の生活のなかに転がっているもの。
−−地元の八百屋さんで、旬の野菜を手にしてみる。暦に合わせて、献立を考えてみる。
そんな風に、ちょっと丁寧に準備してみれば、食卓も違った表情を見せてくれるかも。
「いま、ここ」ならではのおいしさ、探してみませんか?
■菊の月
「菊開月」
何と読むかわかるでしょうか?
これ、「きくさきづき」と言います。
あまり耳にしませんが、九月を表す言葉なんです。
−−そう、九月はまさに菊の月。
澄みわたるような高い空に、長くて深い夜に、菊の黄色が映える季節がやってきます。
今回はそんな菊を使って、秋の訪れを楽しむ、いまならではの食卓を考えてみました。
■食卓から始める、秋支度
きょう九月九日は、重陽(ちょうよう)の節句。
中国からの言い伝えで、この日に菊酒を飲むと不老長寿が叶うそう。
グラスに少しお酒を注いで、菊の花びらを浮かべれば、晩酌にぐっと秋の気配。
さっと湯がいた菊を甘酢であえれば、菊のなますの出来上がり。
なかなか食べることの少ない菊ですが、その鮮やかな色と香り高さは、味わう価値あり。
新しい季節へのささやかなお祝いに、ぜひ作ってみてはいかがでしょうか。
まだ暑さも残るけれど、虫の音も聞こえてきた今日この頃。
たまにはクーラーを止めて窓を開けて、食卓にも秋の風を呼びこんでみては?
(文:大久保彩)